第74話

「ん?携帯いいの?」


「うん、いい」


お母さんは、私の携帯にまた変なメッセージが届き始めたこともきっと分かっている。



「でもずっと震えっぱなしだったからたぶん電話だよ?」



だからきっと私にそれを教えてくれたんだ。



「え…?」


私の携帯に電話がかかってくることはほとんどない。


それが家にいる時なら尚更だ。


だって私の携帯は———…


「登録してる人の番号以外の着信は全部拒否するように設定してるんでしょ?」


「うん…」


「なら登録してるうちの誰かじゃない?」



お母さんとサナは同じ屋根の下にいるからまずありえない。


トモキくんが電話をかけてくることも絶対にない。


となれば私が登録しているのは———…



「ん」


頭に一人の顔が浮かんだと同時に、お母さんは私が今から飲もうとしていたお茶のグラスを持ち上げて私に差し出した。


「え?」


「部屋で飲んでいいよ?」


「…あっ、うん!」


お母さんに言われた通りすぐに立ち上がりお茶を持って自分の部屋へ戻った私は、そのままサイドテーブルへと歩き進めてベッドに腰掛けた。


携帯を確認すると一番に『不在着信 二件』という通知の文字が目に入った。


ラインのアイコンにくっつくように表示されている異常な通知の数なんて見向きもせずに履歴を開くと、その二件はどちらもセイからだった。


やっぱり…

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