第71話
———…ガチャッ!
勢いよく開いた玄関のドアから入ってきたのは妹のサナだった。
「あ、サナ。おかえり」
「……」
サナは私と目が合うと一瞬だけ動きを止めたけれど、黙ったまますぐに私から目を逸らして靴を脱いだ。
「遅かったんだね…こんな時間まで何やっ———…」
私の言葉を完全に無視して部屋に上がったサナは、私の左肩に強くドンッ!と肩をぶつけると「邪魔」と言い、私の反応を待つこともなくそのまま持っていた学校の鞄をすぐそばに放り投げるとそのまま洗面所へ入って行った。
「……」
相変わらず嫌われてるな、私…
その時、徐ろにサナの放った鞄から何か細長い缶のようなものが飛び出しているのが目に入って、私はすぐにそちらに歩み寄った。
それを拾おうと私が右手を伸ばして体を屈めたちょうどその時、
「触んなっ!!!」
薄暗闇にビリビリと響き渡るようにサナの声が張り上げられて、私は驚きのあまりビクッと体を大きく震わせて動きを止めた。
「人の物に何してんのよ!勝手に触んないで!!」
よほど私に触られたくなかったのか、ドンドンと大きな足音を立てながら急いでこちらに戻ってきたサナは、すぐにその缶のようなものを拾い上げて鞄の中に押し込んでいた。
「ごめん、出てたから拾おうとして…それ、何?なんか缶みたいなのが見え」
「関係ないでしょ!?放っといてよ!!」
「…ごめん…」
サナはお母さんよりも心配だ。
学校ってところは居場所がないと本当に息苦しいから。
その辛さが私には分かる。
私のせいでサナが今苦しんでいることだってもちろん、私はちゃんと分かっているから。
だから、どうしても放ってはおけない。
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