第62話

私やセイが見つけなかったら、コトラは今頃どうなっていたんだろう。


それとも私達以外にもコトラにご飯をあげている人がいたりするの?



心配だ。


いつまでここにいるつもりなんだろう。


いつか誰かが保護してくれるの?


そうじゃなかったら、どうなる?


こんなに小さくてこんなに可愛いくて、こんなにも必死に生きてるのに。



必死に、必死に———…



あれ…?



私、どうしてコトラを助けてるんだっけ…




「てかサチ、お前さっきコイツのこと何て呼んでた?」




体はここにあるのに頭の中だけがどこかにふわふわと飛んで行ってしまいそうになっていた私は、セイのその言葉に思わずハッとした。



———…あ、…私今、ここにいる…




「…あ…えっと…コトラ」


「それって小さい虎でコトラ?」


「うん、そう」


「見た目でやろ?」


「うん」


「いやいや、コイツどう見てもネコやで?」


本気で引いてそうな顔でそんなことを言ったセイに、私は思わずムッとした。


「何が言いたいの?」


「センスない」


「そんなことないよ!コトラって可愛いじゃん!ていうか見た目っていうのは柄って意味でだよ!?」


「んー…にしてもなぁ」


「じゃあそっちは?さっき何て呼んでたの?」


「ハジメ」


「何で“ハジメ”?」


「俺コイツに出会ったの高校に入学してすぐの頃やったし」


え…まさか…


「新学期っつうことで“ハジメ”」


私の嫌な予感をものの見事に的中させたセイに、私は思わず「はっ」と小さな笑いを溢した。

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