第51話
怖い人だけじゃない、か。
そういえばお父さんはとても優しい人だった。
私もいつか出会うんだろうか。
私の全てを優しく包み込んでくれるような大事な人に。
「絶っっ対変に迷惑はかけへんから」
理由はさておき今となってはこの学校で唯一私に普通に声をかけてくれるこの人を、私はみすみす逃してしまっていいのだろうか。
こんな今の単なる会話だって、私からすればきっと貴重なもののはずなのに。
「…本当に私でいいの?」
気付けばそう言っていた。
「え?うん…?もちろんええけど?」
そう言って彼は少し不思議そうな顔をしていた。
改めて思うけど、彼はやっぱりまだ何も知らない。
「じゃあもしその付き合ってる間に私に好きな人ができたらどうするの?」
「うん、そりゃもちろん全部無しでええよ?何回も言うけど、迷惑は絶対かけへんから」
「…うん、わかった。じゃあ、これ食べてくれたら引き受ける」
私はそう言って、教室を出てからずっと手に持っていたお弁当を顔の前まで持ち上げた。
「え、弁当?いや、自分それ食べな何食うん」
「食欲がなくて…でもお母さんがせっかく作ってくれたから無駄にはしたくないの。うちのお母さん料理上手だから、味の方は安心してくれて大丈夫」
「そっか。まぁそういうことなら全然ええよ。むしろ昼飯代浮くし、俺からすればラッキーやわ」
ようやく私からお弁当を受け取った彼は、私と同じように手すりの方へ体の向きを変えると私の右隣に並んで早速お弁当を開け始めた。
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