第47話

依然妙な笑い声はどこからともなく聞こえてくる。



私の席は、着席と同時にほんの少し机を後ろに下げられたことでようやく机と椅子に隙間が生まれた。



人が一人座るにはあまりにも狭い幅だったけれど、そこに座らず先生に何か突っ込まれるのも面倒で私はもう無理矢理その隙間に体を滑り込ませた。


そんな私の動作もまた、誰かが笑った。



背中にはぴたりと背もたれがくっついていて、お腹にはぴたりと机がくっついている。



どこからか小さな声で「サンドイッチ」と聞こえたけれど、私はそれを他人事のように的確な例えだと思った。


狭すぎて体が痛い。


教科書やノートを取り出すのも一苦労だった。


先生に当てられたらもう確実に立ち上がれない。



こんなことをされるんじゃあ、もう休み時間にここから動くこともできない。



それに机はなぜかガタつきがあるものに入れ替えられていた。


私がノートに板書しようと腕を乗せるたびにガタッと音が鳴って傾きが変わる。


それからその机にはたくさんの心無い言葉と卑猥な言葉がかき集められていた。


私はそれを消しゴムでひたすら消した。



それをまたみんな、楽しそうにクスクス笑っていた。


カシャッとシャッター音が聞こえた時は、もう本当に消えたいと思った。



先生はどことなく落ち着きのない生徒達に「んー?」なんて言いつつも、特に気にすることなく授業を進めていた。




高一、二学期は始まったばかり。



私、卒業まで耐えられるのかな…




“何かあれば言ってね。お母さん、絶対サチの味方してあげるから”




…いや、言えないよ。




私は机の左横に引っ掛けている鞄の正面ポケットから学生証を取り出すと、それを左手でお腹に押し当てた。


その手を覆うようにさらに右手も乗せた。




悲しませたくない。


それにこれは仕方ないことなんだとちゃんと私は心得ている。


だって全ては私のしたことへの罰なんだから。

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