第43話
私と彼の会話に特にこれといった終わりがあったようには思えなかったけれど、二人の会話はひたすら続いていたから私はもう何も言わずに反転して歩き始めた。
何も考えない。
動揺なんてしてやらない。
反応すれば向こうの思うツボ———…だ。
彼がその他大勢の私を笑う人達の中の一人に過ぎないのだと思えば、なんだか自分がとにかくバカらしく思えた。
“お願いだからもう死ぬまで静かに息だけしててよ”
本当、全部サナの言う通りだよね。
私、何を期待して———…
彼に声をかけられた廊下を抜けて渡り廊下へ出たちょうどその時、
「ちょいちょいちょい…!!」
「っ、」
私の後を慌てて追いかけて来たらしい彼は、私の行く手を阻むように私の目の前へ回り込んで無理矢理足を止めさせた。
私達がいる渡り廊下には偶然にも人は一人もいなかった。
「ごめんごめん!待って!」
「謝る必要はないよ。私のことは気にせず、早くさっきの人のところに戻ってあげて」
私はそう言って彼を避けるようにその体の左側を通り過ぎようとしたけれど、彼は右に一歩ずれて再び私の行く手を阻んだ。
「いや、もうさっきの子との話は終わっとるから。担任が呼んでたでってのを俺に伝えに来ただけ」
「……」
「クラスのグループラインでも連絡したのにとか言うとったけど、俺携帯見てへんくてめっちゃキレられてんけど。これ俺悪い?」
「そんなこと私には分かんないよ。ていうかそれなら職員室に行かなくていいの?」
「おう。それはまた次の休み時間でええよ」
「…そっか」
今度は彼の右側を通ろうとしたけれど、同時に彼は左にずれて再び私の行く手を阻んだ。
「もう何!」
「ははっ、だから待ってって」
再三に渡って歩き進めたい私の邪魔をしてくる彼に割と本気でイラつき始めた私だったけれど、そんな私とは対照的に彼はどこか楽しそうに笑っていた。
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