第26話
「そろそろ…」
二十時を目前にして、私は再び口を開いた。
外はすっかり真っ暗だ。
「…ん」
依然こちらを見向きもせずにそう言ったトモキくんに、私はスッと立ち上がり「お邪魔しました」と言ってその部屋を後にした。
それに対してトモキくんから何か言葉が返ってくることはない。
それももちろんいつものことだ。
私が買ってきたあのコーラは、最後までずっと床に転がったままだった。
トモキくんの家から駅までの帰り道、何気なく携帯を触っていた私は「え…」と声を漏らして思わず足を止めた。
『藤野がサチをグループから削除しました。』
どうやら私は、トモキくんとセックスしている間にクラスのグループラインを退会させられていたらしい。
“藤野”は、入学して一番最初に仲良くなった前の席の女子だった。
そして私を今日一番最初に無視した人。
そっかそっか。
なるほどね。
それならもうこのトークルームが私のこのトーク一覧に存在する必要はない。
私はすぐにそれを一覧から削除して、携帯をポケットにしまい歩き出した。
来た時と同じように駅の裏手に辿り着くとそのまま正面に回って、駅に入ると私はコンビニに立ち寄ってまたすぐに駅を出た。
それから今度は真っ直ぐにバス停そばの花壇を目指した。
ベンチのところまで来るとすぐにその場にしゃがみ込んだ私は、何の躊躇いもなく地面に両手をついてその下を覗き込んだ。
「…ん、いたいた。おーい、コトラー」
外は暗く駅や通る車などの微かな明かりしかないから見えにくいものの、その下の奥にいたコトラは両手をクロスさせるように組んでそこに顔を乗せて目を閉じているようだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます