第25話

服を直し終えると、私はずっとスカートのポケットに入っていた携帯を取り出した。


時刻は十三時半だった。



学校が早く終わった分、トモキくんとの全てを終えたところでまだこんなにも早い時間だ。


でも私はまだ帰ることはできない。


それでも微かな可能性に賭けるつもりで「帰ってもいい?」と聞いてみたけれど、依然背を向けるトモキくんから返って来たのはいつもと同じ「まだ」という一言だけだった。


「うん、わかった」


私はそう言って改めて楽な姿勢で座り直すと、そのままお互い静かにテレビを見た。


ついていたテレビ番組は昼のバラエティ番組で、その中の芸能人がどんなに笑っていても私とトモキくんは静かにそれを見ているだけだった。



でも今日は少しだけ会話をした。



「お前ずっと携帯鳴ってんな」


「…うん」


「さすが有名人」


「……」



ただそれだけ。


その言葉に今一度携帯を開いてみれば、あの通知の数は“482”になっていた。


この様子なら今日中に五百は超えそうだな…







トイレを借りたりで立つことは何度かあったものの基本私はトモキくんの後ろで体育座りをしていて、時刻は早くも十七時になった。


「…帰ってもいい?」


「まだ」


「でも明日も学校が」


「まだ」


「……うん、わかった」


やっぱりダメか…


九月の十七時はまだ明るい。


何をするわけでもないのに、トモキくんの私を帰すタイミングは必ず外が暗くなり始めてからだ。


冬は暗くなるのが早いから割と早く帰れたのだけれど、夏になってからは十九時くらいにならないと許しはもらえない。


夏休みの何度かここへ来た時もそうだったから分かってはいたのだけれど、学校も始まったわけだしそういう配慮がある可能性だってあるかもしれないと万に一つの可能性に賭けてみたかった。


結果惨敗した私は、また大人しくひたすらテレビのニュースを眺めた。



この時間に何の意味があるかはよく分からない。

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