第24話

パッとこちらを振り返ったトモキくんは、何も言わずに私のお腹にある自分の出したそれをティッシュで拭き取ると、馬乗りになって私の首の後ろに腕を回し私の体を起こした。


それから私の縛られた手首は、正面から抱きしめるように密着してきたトモキくんの背後に回された両手によって外された。


私を拘束していたものの正体はベルトだった。



「…ありがとう」


お礼を言うのが私であることがはたして正しいのかはいまいち分からないけれど、トモキくんは「ん」と言うだけだったから間違いではなかったのだと思う。


またこちらに背を向けテレビを見るトモキくんの後ろで、私は上がったままのスカートを直したりシャツのボタンを閉めたりして身なりを整えた。



特に同意した覚えのないセックスの後に、自分で乱れた服を直す時間はなんだかいつも惨めになる。


こういう時、普通のカップルなら営みの感想を言い合ったりするんだろうか。



「……」


「……」


私達はというと、何も話さない。


まぁトモキくんとカップルだなんて申し訳ないけど死んでもごめんだから、比べるなんてことがそもそもおかしいのだけれど。



トモキくんの本当の年齢を私は知らない。


出会った時は十八だと言っていたからそれで言うならきっと今は十九歳なんだろうけれど、とてもじゃないけど十代には見えない。


おそらく二十代前半。


二十四とか五とか…


それで言うなら“トモキ”という名前だって本当なのか定かじゃない。


でもその嘘を詰める必要はないからわざわざ聞いたりもしなかった。


今となっては私達が会うのなんてこの部屋でだけだから、年齢や名前なんてどうでもいい。

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