第20話

抵抗なんてしないのに、私の手首を縛り終えたトモキくんはそのまま私の手首を左右に引き合って外れないことを確認していた。



「はぁ、」と小さく一息つきながら私の正面へ顔を持ってきたトモキくんは、ゆっくり優しく私に唇を重ねた。


角度を変えたりトモキくんの舌が私の口内で動く度にクチュッとヤラシイ音がする。





吐きそうだ。





しばらくキスをしたトモキくんはゆっくり顔を離すと、優しく笑いながら私の頭を撫でた。



「お前、汗くさいよ?」



この人は、優しい顔でなんてひどいことを言うんだろう。



「…ごめん」


「外そんなに暑かったか?」


「…うん…シャワー…」


「は?誰がお前に風呂なんか貸すかよ」


「……」


それでも“じゃあやめよう”と言えば、トモキくんはとても冷めた目をして怒るだろう。


でも私だってもうトモキくんとはそれなりの付き合いだから、彼が私に“汗くさい私”への何らかの対処を求めているわけじゃないことくらい分かってるよ。


でもそんなことが分かったところで何かの役に立つことはないし、誰かが褒めてくれるようなことでもない。



だって私、




「いくらバカでも自分の価値くらいはちゃんと知っとこうな」




ここでも異物扱いじゃん。



ゆっくり肩を押されて仰向けにされる時、なぜかスローモーションのような感覚がした。


足元にトモキくんがいるせいで脚が伸ばせないからパンツなんてきっと丸見えだ。


これじゃあさっきスカートを捲られるのを慌てて阻止した意味なんてまるでない。



「…ははっ…夏服で縛るのって最高じゃん」



私の顔の真横に左手をつくようにして真上にやって来たトモキくんは、楽しそうに笑っていた。


その言葉の“夏服”に何の意味があるのか分からないでいた私だったけれど、直後トモキくんが右手でシャツの上から私の胸を形を確かめるように撫でたからその意味はすぐに分かった。


確かにこうして両手を後ろに回して仰向けになれば、大して大きくもない胸だってそれなりに強調はされる。


シャツのボタンを丁寧に外され下着が露わになることに、もう私が何かを思うことはない。

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