第18話
「…コーラ買って来たよ」
トモキくんの言葉を無視して私がそう声をかけてみれば、トモキくんはフンと鼻で笑いながら「遅えよ」と言うだけでやっぱりこちらを見ることはなかった。
「だってお前さ、俺ライン送ったのいつよ?」
「…夜中の一時」
「とっくに買いに行って飲んだわ」
そう言って空いている左手で足元にある小さなテーブルを指差したトモキくんに従うようにそちらを見れば、そこには空になったコーラのペットボトルが一本あった。
「…じゃあこれいらない?」
「……」
「とりあえず冷蔵庫に入れとくから、また飲みたくなったら」
「はぁっ…」
私の言葉に被せてそんな大きな息を吐いたトモキくんに、私はコーラを飲むのだと理解しフタを開けた。
予想通りトモキくんはゆっくり体を起こしてあぐらをかくと、そのまま両手を床について体ごと反転するようにこちらを向いた。
「お、制服じゃん」
「今日から二学期」
「へぇー」
興味もなさそうに相槌を打ったトモキくんは、私から栓の開いたコーラを右手で受け取ると同時にこちらに左手を伸ばして私のスカートの裾を捲り上げようとした。
「ちょっ!」
私が慌ててスカートを押さえたことで捲られることは阻止できたのだけれど、そんな私の反応に依然あぐらをかいて座るトモキくんは最初は「ははっ、」と笑ったけれどすぐに冷めた顔で「きんもっ」と言った。
キモいと思う相手のスカートの中なんて見ようとしないでよ…
私から受け取ったコーラを一気に三分の一くらい流し込んだトモキくんは、その炭酸のキツさに顔を歪めつつ「煙草は?」と続けた。
「そんなのないよ」
「俺コーラの後に『煙草も』ってまたラインしたろ」
「いつも言ってるけど私は買えないって。ましてや今日なんて制服だし」
「…ふーん」
自分でその話を始めたくせにどこかどうでもよさそうにそんな相槌を打ったトモキくんは、持っていた飲みかけのコーラをそっと自分の座る目の前の床に置いた。
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