第16話

別に一人でいたって高校には通えるし。


やることをやっていれば卒業だってできる。




中学の時の私は蔑む直接的な言葉がとにかく辛くて怖かったけれど、なくても私のダメージはさほど変わらなかった。


異物はどこに行ったって異物扱い。


期待なんてしたところでそんなに甘くはない。


朝来る時の電車でちゃんとそれを分かっていたはずなのに。





「うっそ、マジ!?」


「マジだよ、やばくねー?中学一緒だった奴から聞いたから間違いねぇよ」




帰り際靴箱でどこからかそんな会話が聞こえた。


うわ…



「アイツただでさえ中学の総体で各学校のエースボコボコにして回ってたのによー。夏休み丸々アメリカで修行とかどんだけテニス上手くなるつもりだよ」



え…



「家にテニスコートあるって聞いたことある」


「あぁ、あれマジだって」


「やべー」



あ、なんだ…私の話じゃないじゃん。


ここまでくれば、なんだか全ての言葉が自分のことを言われているように思えちゃうな…


流石に自意識過剰だ。



安心してぼんやり人の会話を聞きながら靴を履いて歩き始めると同時に、三年生らしき女子にドンッ!と強めに肩をぶつけられた。


「どけよ、クソビッチ」


「っ、………すいません」


私の小さな謝罪なんてお構いなしに、その先輩はスタスタとどこかへ行ってしまった。


見ず知らずの先輩にそんなことまで言われるなんて…きっともう私の話は学校中に広まってるんだ。


ビッチ…ではないんだけど…


でもまぁそう思われても仕方ないか。


そんなことより、もっと遠い高校にするんだったな。


いや、それは通学費の面でもっとお母さんに迷惑かけちゃうか。



どこか冷静にそう判断をしてみればこの今が私の最善な気がして、頭はなんだか軽くなった。

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