第11話

間もなく電車は停車し私の目の前にあるドアが開くとせきを切ったように車内の人が後方から押し寄せて、私は誰かに肩をぶつけられて前のめりになった拍子にホームへ降り立った。



「っ、…」



怖い…


さっきの人はまだ近くにいるんだろうか。


電車を降りたすぐそこで立ち止まる私はとにかく邪魔で、いろんな人が私に冷ややかな目を向けながら歩き去っていった。



それは私が邪魔だから見ているのか、


去年のアレを知っている好奇の目なのか、…


今の私には判断が難しかった。



「…はぁ…はぁ…」



私はいつのまに息が上がっていたんだろう。



とりあえず一人になりたい…


電車から改札へと流れる人の群れに加わるにはあまりにも頼りない足取りで私は改札を抜けると、そのまま駅のトイレを目指して奥の個室に入るとその場にしゃがみ込み両足を抱えるように身を縮めた。



壁の向こうの方からは、ガタガタという電車の出入りする音と駅内の何を言っているかまでは分からないアナウンスの声が聞こえた。



…落ち着こう。


過去がどんなものであろうと今の私には紛れもない高校へ通う権利があるんだし、家族に迷惑をかけはしたけれど他人にとやかく言われる筋合いなんてどこにもない。



お世辞にもきれいとは言えないであろうトイレの空気も、深く吸い込んでゆっくり吐き出せば今の私をしっかり落ち着かせてくれた。


頭がスッキリしたのを自覚すると同時に、私は何事もなかったかのようにスッと立ち上がってトイレを後にした。

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