第8話
———…ガチャッ…
一学期よりも断然重く感じた玄関のドアをぐっと大きく開けると、真っ先に強い日差しが目に入り私は思わず目を細めた。
私が今いる三階のこの団地の通路の真下からは、これから学校に向かうと思われる小学生達の声が聞こえてきていた。
七時四十五分。
朝一にあるホームルームの時間を思えば家を出るにはまだ少し早いけれど、私としては予定通りだった。
家から駅までは徒歩五分。
そこから電車に二十分揺られれば学校の最寄駅に到着する。
そしてその駅から学校までは徒歩十分。
たった三ヶ月半ですっかり慣れてしまったその通学ルートを、私は今日も当たり前のように辿り始めた。
確かに家を出るまでは予定通りだったはず。
それなのにその予定に対する後悔は想像よりもはるかに早く訪れた。
「えっ、アイツじゃね!?」
最寄駅に入ってすぐに見知らぬ男子高校生にそう言って指を差され、私はようやくもう快適な学校生活はとっくに終わっていたことを思い出した。
突然のアイツ呼ばわりに不快感がぶわっと私の中に広がったけれど、その直後にこれまた見知らぬ声で「アレ?」と聞こえてきたからもう他人からの呼び名なんて一瞬でどうでもよくなった。
もっともっと早く家を出るべきだった。
…いや、それもサナの言うように“同じこと”か。
どうせ時間を早めたところでその時ここにいる人が私を見つけてしまう。
それでなくたって私は今学校に向かっているんだから。
そこはもうきっとこんなもんじゃ済まない。
私が駅のホームで自分が乗るべき電車を待っているだけで、四方八方から
さっきの男子高校生は一体誰だろう。
さっきから背後でクスクス笑っているのは誰だろう。
ヒソヒソと声を潜めて話をしているのは誰だろう。
それで潜めているつもり?
「三十五点」って言ってたの、聞こえたよ?
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