第3話
一晩で増えた数は五十件以上。
静かにトーク一覧を開いて、私はその中から急いである名前に新しいメッセージが来ていないかの確認をした。
その間も目に入る卑猥な言葉は、見る気なんてさらさらないにも関わらず私の眉間に無意識にシワを寄せさせた。
…不快だ。
こんな犠牲を払ってまで捜しているその人の名前だって、私は見つけたくて探しているわけじゃない。
だからどうか、何の連絡も来ていませんように。
そう思いながら下へ下へとスクロールする私の指先は、焦りからか少し震えていた。
トークの一覧が下へ行けば行くほどに変な汗をかいた。
現在の時刻は朝の七時過ぎ。
私に用があるからといって、あの男がこんな早くに起きているはずがない。
メッセージが来ているとすれば夜中三時くらいとか、もしくはもう少し早い———…
「———…あ…」
その人の名前を見つけた私の指先は、それまでひたすら勢いよくスクロールしていた割にピタリと綺麗に動きを止めた。
きっと私の頭よりも目の方が先に反応を示した。
“トモキくん”というその男の名前の横にあるのは、決して見たくはなかった新しいメッセージの有無を知らせる数字の“2“だった。
「“1”でもない……」
それが私に送られた時刻は、夜中の一時頃だった。
そのトーク画面を開いて内容を確認すると、私はすぐに『わかった』と返信をして携帯をスカートのポケットにしまい自分の部屋を後にした。
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