第2話
ブブッ……ブブッ……
サイドテーブルに置いている携帯が短く震えるのを横目に、私は鏡の前で左右に分けた胸まである長い黒髪の右側を三つ編みに結っていた。
今日は天気がいい。
新学期日和だ。
まだまだ外は暑いからうんざりはするけれど、日焼けをしない体質で本当によかったなぁ…
それでも一応日焼け止めは塗っておくべきか?
十年後、二十年後を見据えて。
「二十年後……三十六歳……」
高校に入学して早くも五ヶ月が経った。
昨日まであった夏休みを除けば、学校に通った日数はおおよそ三ヶ月半程度。
これが電車通学圏内の高校に通う平和の限界か…
思ったより長く快適な学校生活を送れたものだ。
もっと早くこうなっていたっておかしくはなかったはずだから。
同じ中学からうちの高校に進んだ人はそれなりにいるんだし、こんな今時らしからぬ三つ編みをしたところできっと存在を消し切ることなんて———…
ブブッ……
…また鳴った。
今度はそちらに目をやりはしなかった。
慣れた手つきで左側の髪も三つ編みに結うと、私は小さく「はぁ、」と息を吐きながらさっきから鳴り止まない携帯のあるサイドテーブルへと向かった。
画面にそっと指先を当てると、それに反応した画面が今度は親切にも勝手にそのまま私の顔を認証までしてロックを解除した。
ラインのアイコンに表示される通知の数は“433”となっていた。
「…うわ…」
中学卒業とともにおさまっていたそれがぶり返したのは二週間ほど前。
それは私の快適な学校生活の終わりの合図だった。
初めはしていたブロックは、早々にキリがないと気付いてしなくなった。
トーク画面を開いたことにより既読がつけば向こうは調子に乗りそうだから、もう誰が私に卑猥なラインを送ってきているのかの確認すらもしない。
したところで知らない人だから意味もない。
それでもしなければならない確認はある。
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