交渉決裂
「げっ…ミズキが暗い!」
どうして落ち込む友達に対して、そんな発言が出来るのか分からない。
「アッキーにフラれた」
「は!?」
でもそれは、友人の優しさだとあたしは信じてる―……からね…?
「今日一緒に帰れないって言われた」
「うん」
「そのまま立ち去って行っちゃった」
「…うん」
「うん」
「いや、え?」
「ん?」
「何てフラれたの?」
「だから言ったじゃん…今日一緒に帰れないって…」
「フラれたの?」
「うん…」
「そっか残念だったね」
「ちょっと!何でそんな棒読みなのよ!」
人が落ち込んでいるとゆうのに、信じられない。
彼の立ち去る後ろ姿を、あたしがどんな思いで見つめていたか…
「で、今日どうするか話したの?」
淡白な友人は、切り替えが早い。
「だから、それを聞いたら一緒に帰れないって言われたの!」
「…なにそれ?」
「知らないよ!あたしだって意味分かんないんだもん!」
席に座ったまま
「つまり、クリスマスの予定を立てられなかった訳だ」
「うん」
机に乗せた腕に顔を伏せているから、自分の声がくぐもって聞こえる。
「先輩、予定があるのかな」
「知らない…」
「だよね」
溜め息を吐いた友人は、あたし以上に状況が把握出来てないと思う。
「でもさ、こればっかりは考えようだからね」
「……」
「世間がクリスマスを盛り立ててるから、イベントとして成立しちゃってるけど。実際クリスマスはこうしなくちゃいけないってゆう決まりなんて無いんだし」
「……」
「それに、約束してた訳でも、思わせぶりな発言をされた訳でもないし、先輩に悪気なんてないよ」
「でも…冷たかった…質問に答えずにさっさと居なくなるし…」
「急いでたとか?」
「それなら急いでるってゆう人だよ。それに、話があるって言ったら聞いてくれたし」
「そっか、じゃあ信用してあげれば良いじゃん」
「でも!」
「あのねミズキ、あたし思ったんだけど―…」
結局モヤモヤしたまま午後の授業を受けたから、もちろん内容なんて頭に入らなかった。
授業に集中しようと意識を向けるけど、気づいたら彼の事ばかり考えて。
上の空も良いところ…
このモヤモヤを晴らしたくて、彼にメールしようかとこっそり携帯を開いてみた。
どうして今日一緒に帰れないのか。たまたま友達に誘われたのか、元々約束してたのか。
それとも何か他に用事があるのか…
だけど、昼休憩の時の彼の態度を思い出して、メールしようとしていた手が止まった。
どっちにしたって今日は彼と過ごせない。だったら連絡したってウザかられるだけかもしれない。
溜め息吐くのと同時に、携帯を閉まった。
何だか急に彼が冷たい人に思えて、ショックを隠しきれない。
恋人達のクリスマスを重要視してない彼氏なんて、彼氏の風上にも置けない!
そう思わない!?
「そうかもね。でもそうゆう人も居るんだよ」
何でこんなに冷めたいんだろこの人!
「もう諦めなよミズキ…」
「諦めてるよ!」
「嘘ばっか」
「嘘じゃないし!」
「今日ずーっとグチグチ言ってんじゃん!」
「言ってるさ!」
気づけば放課後。
さっさと帰る気にもなれなくて、まだ教室に居座ってるあたしは、
「良い加減にしてよ…」
呆れる友人を巻き添えにしている。
「だって!クリスマスなのにこのまま真っ直ぐ家に帰る気になれない!」
「ここでグチグチ言ってる方が時間の無駄でしょうが!」
「じゃあこれからどっか行かない!?」
「宛も無くクリスマスの街をブラブラしたくないわ!」
「…冷たい」
「はい帰ろう」
薄情な友人は立ち上がると、
「ミズキー…」
動かないあたしに溜め息。
「わかったよ…」
そして諦めたように、
「あんたの好きなクレープ食べに行こう」
「本当…?」
クリスマスの街に出向く決意をしてくれた。
「持つべきものは友達だね!」
「よく言うよ」
「薄情な奴とか思ってごめんね!」
「…あんた最低だね」
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