第98話
そっと顔を離したニシヤマくんは、十センチくらいの距離で止まるとじっと私を見つめた。
状況が全く掴めない私は、ただ固まったままに見つめ返すことしかできなかった。
「……ふっ」
突然ニシヤマくんが笑って体を完全に引いたことに、私はまた更に訳が分からなくなった。
「お前やべぇな」
ニシヤマくんはまだ笑っていて、でもその笑い方は楽しいというよりはバカにしているというような感じで私の胸は一気にザワザワした。
「……え…?あの、…」
今日何度目かも分からない“あの、”という言葉は、自分でも分かるくらいに弱々しくて震えていた。
「お前みたいなタイプもいるんだな」
「え?何が…ですか?」
「そんな簡単によく知りもしねぇ男に声かけて部屋に連れ込んで、キスされて抵抗もしねぇとかお前どんだけ尻の軽い女なんだよ」
え…
なに…
「まぁなんとなく分かってたけどな?こんな平気で男部屋に入れて風呂まで入らせるし」
今のニシヤマくんは怒っているわけでも笑っているわけでもなく、
心から呆れているようだった。
「その上真新しい歯ブラシとか色々用意してるって…あれ男用のストックだろ?お前、あれはやりすぎ。いくらヤリたいだけの男でも引くぞ?」
両手で包み込むようにマグカップを持っていたその指先が、
燃えるように熱い。
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