第97話
ていうか、やっぱり何度考えてもこの状況は本当に本当に信じられない。
ニシヤマくんが私の部屋にいて、
うちのバスタオルを使っていて、
うちのマグカップで私の入れたコーヒーを飲んでいるなんて。
ここはやっぱり天国だ…
そうしみじみと思いながらコーヒーを啜れば、氷を入れなかった私のコーヒーはまだまだ熱々だった。
でも、それすらも心地良い。
それになんだかこんなに安いどこにでも売ってるようなコーヒーが、格別に美味しく感じるなんて。
それすらも信じられない。
「美味しい…」
私の思わず漏らした声に、マグカップを口元に運ぼうとしていたニシヤマくんの手が止まった。
「…いつも飲んでんだろ?」
「はい…あ、でもなんか今日は格別に美味しいですっ!!」
「……」
口元の緩みなんてもう抑えきれなくて、でももう今の私にはそれすらも心地良いくらいに脳内がお花畑だった。
両手で持って口元に運ぶマグカップは私の指先もじんじんと温めていて、でも熱すぎるせいでよく見ると皮膚は少し赤くなっていた。
「でもさすがに七月に飲むには熱すぎっ———……」
一瞬何が起きたのかよく分からなかった。
マグカップを持つ指先を見ていた私がふと何気なくニシヤマくんの方を向いて顔を上げると、目の前にはニシヤマくんの顔があって、
次の瞬間、唇が触れ合っていた。
私は目を見開いて、そのまま固まった。
三秒…くらい?
とてつもなく長く感じたその時間、私は驚きのあまり息を止めていた。
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