第90話

あの、


高校の時ニシヤマくんを呼び出していた、あの女子達。




今、あの子達の気持ちがすごくよく分かる。




浮いているみたいに心がふわふわして、大して酔ってるわけでも目が回ってるわけでもないのに頭がクラクラする。






言ってしまいたくなる。




好きだ、と。


好きで好きで仕方がないんだ、と。




言った後のことなんてどうでもいいと思えてしまうくらいに、感情が高ぶっている。



こんなこと、遠くから見ているだけの時は一度もなかった。



みんな可愛いから、自分に自信があるから告白するんだと思っていたけれど、あれはたぶん違う。





みんな好きだという気持ちを抑えられなくなったんだ。




それでも出会ったばかりの私がそれを言うのは絶対にダメで、もっとちゃんと関係を築いてからじゃなきゃどうにもならない。


そんなことしたら、この出会いすらも無駄にしかねない。




きっと今の私は、“赤の他人”が“まぁ他人”になれたくらいのものだろう。





シャワーの音が聞こえる中、私はコソッと脱衣所に入って洗面台下の扉を開けた。



早くしなきゃ、今出て来られたらヤバいっ…!!



私は焦る気持ちを無理矢理落ち着かせながら、そこから以前旅行に行った時に泊まったホテルから持ち帰ったアメニティを取り出した。





ニシヤマくんはもしかすると久しぶりのお風呂かもしれない。



可能な限りもてなさなきゃ…!!




まぁどこぞのホテルのアメニティでもてなすってのもどうかとは思うんだけど、無いよりは絶対にあったほうがいいはずだ。

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