第78話

ニシヤマくんはそんな私にまた小さく笑うと、目の前にしゃがむ私を置いてゆっくり立ち上がった。



「えっ…」


それに対して、ニシヤマくんを見上げながら私もつられるようにゆっくりと立ち上がった。



「来ますか…?私の家……」


「お前しつけぇから」




奇跡だ…



奇跡が…起きてる…



私の左手にはニシヤマくんがさっき触ったハンカチがあって、その上話すだけでも今までの私からすれば大事件なのにそれだけでは終わらないなんて。


ましてや私の家にニシヤマくんが来るなんて…!!!



全力で連れ込もうとしていたくせに何言ってんだって感じだけど、でもまさか本当にそうなるとは思わなかった。



唖然とする私を置いてニシヤマくんはトンネルの出口の方へスタスタと歩き始めて、出口の直前で足を止めた。


それに私も慌てて隣へ行くと、ニシヤマくんは私のいた左側に顔を向けた。



「家、案内しろよ」



ニシヤマくんって並ぶと私よりもこんなに背が高いんだ…


私の目線の高さはニシヤマくんの鎖骨辺りだった。


抱きしめられるとどんな感じだろうなんて思ってしまった私は、間違いない。




正真正銘のド変態だ。





「てかお前、トンネルの中でもずっと傘さしてんのな」


「…えっ!?あっ、はい…すみませ…」


良からぬ妄想が膨らみかけたところでそんな事を言われたもんだから、私はいろんな意味で恥ずかしくなって気付けば普段の口調に戻っていた。


「別に謝ることじゃねぇけど。てかそれはいいから早く案内しろよ。シャワーも浴びてぇし」


「はいっ…!」




ニシヤマくんはなかなか図々しい人らしい。

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