第76話

普通に会話ができていることには自分でも驚いた。


そんなことならずっと躊躇ってきた今までの時間はなんだったのか。


ていうか、なんで“同じ高校だった私”として声をかけることしか頭になかったんだろう。





盲点だったな…





「てかあんた逆ナンかなんかか?」


「ちっ、違います!!人助けです!!」


「へぇー」


ニシヤマくんは興味なさそうに返事をすると、膝に乗せていた私の左手にさっき私が渡したハンカチをポンッと乗せた。



「まぁ俺に助けはいらねぇからさっさと帰れ。てかこんな道を夜に女が一人で通るなよ」


そのハンカチを受け取ると、さっきニシヤマくんが持っていたと思われる部分が少し湿っていた。



それに“女”って…



ニシヤマくんは私をドキドキさせる天才だ。






やっぱり好きだ。


九年経ってやっとまともに話せて、そしたら好きだというこの気持ちはこんなにも一瞬で大きく膨らんだ。




このチャンス、やっぱり逃すわけにはいかない。





「シャワー浴びたくないですか?」


「お前俺の話聞いてたか?」


「服もびしょ濡れだし…浴室乾燥あるから、うちに来れば服もすぐ乾きます」



それ以外のうちに来るメリットは…




…あれ?


ていうかなんで私はニシヤマくんを部屋に連れ込もうとしてるの…?

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