第75話

自分でも笑ってしまうくらいに私はドキドキしていて、嬉しくて、楽しくて、…



…このまま帰るなんて絶対にできない。



「でででもっ、こんな姿を見た上で死なれたら後味悪いです!!」


「心配しなくても俺が死んだってお前にその知らせはいかねぇよ」



ニシヤマくんはそう言うと、「てかお前誰だよ」と言った。





やっぱり、私のことなんて覚えていない。



でもそれは今の私には好都合だった。





知らなくていい。



透明人間の私なんて、知られたくない。




今、出会いたい。




今の私だってもちろん地味な女には変わりないけれど、それでもこれから出会う私はニシヤマくんの中の透明人間にはなりたくなかった。




「私は普通の一般人です」


「普通の一般人がこんな時間にこんな男に声なんかかけるかよ」


ニシヤマくんはそう言うとまた小さく笑った。



あれ…


なんかこれ…距離縮まってないか…!?

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