第66話

家の近くまで来る頃には、私の足元はもうすでにびしょびしょだった。




梅雨なんか大っ嫌いだ。




私は土手沿いを歩いて帰る道を選んで歩き進めた。


もうここまでくれば足が濡れようがどうってことはない。








———…土手沿い…





私はいつも見ているだけで、何気にここに来るのは初めてだった。




そこで立ち止まって私の住むアパートのベランダを見てみると、やっぱり距離があるせいでそこに人がいたって顔までは特定できなそうだった。




私だけがこっそり彼を見てられたんだけどなぁ…


それだけで良かったんだけどなぁ…





この辺、よく座ってたよなぁ。



今どこにいるんだろう…



ここよりももっといい場所を見つけたのかな?


それってもしかして前に駅で一緒にいた女の人の家?


じゃあやっぱりあれは彼女?




神様は今度こそ私を見放すだろう。



ここまでしてやったのにまたそのチャンスをみすみす逃すのか、と。



だって声なんてかけたって私のことなんて覚えてる訳がないから…




私は家に帰ろうと、また雨の中を歩き始めた。



スカートもかなり濡れてきた。


帰ったらシャワー浴びてすぐ寝よう。

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