第64話

繁華街を抜けるとすぐに駅に出たけれど、私はその駅を素通りした。


外はいまだに雨が降り続いていた。


おまけに夏を控えた外の空気はぬるいからジメジメしていてとても不快だ。




今年は本当に雨ばっかりだな…




疲れたと思っていたくせに私が電車に乗らず歩いて帰ろうと決めたのは、なんとなく今の自分の姿を誰にも見られたくないと思ったから。


…まぁ誰も見てないけど。




傘をバチバチと打ち付ける雨の音が今はなんだか心地良かった。





はぁ…





やっぱり眼鏡って不利なのかな。





いやだから問題はそこじゃないって…




「はっ…」


何度も何度も同じことを考えいる自分に、私からは自嘲的な笑いが溢れた。


大体本当にそう思うんならさっさとコンタクトにしろっつうの。




今頃あの“ケンちゃん”以外の男三人は話してるんだろうな。


なんだあの地味な女って。



…いや、話にも出てないかもしれない。



きっともう二度と会うこともない。


会ったって向こうは私に気が付かない。


カイくんだって改めて名前を教えたけれどもうきっと忘れてる。


私も忘れてやりたい…





…にしても雨すごいなぁ…




はぁ…苦しい…



これはこの大雨のせいなのかな。


まるで酸素がうまく吸えないみたいな感じだ。

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