第58話

でもなんだかその言い方って私が今の仕事をしているのはユマちゃんありきみたいじゃないかな?



それはない。


私は自分の意思であの仕事を選んで面接を受けたから。


でもまぁせっかく話を振ってくれたのにそんな文句を言うのもおかしいし、それを口にする勇気なんて私にはあるわけがない。



「…はい」


「仕事楽しい?」


「はい」


「どんなことするの?」


「…注文されたコーヒーとか提供します」


「へぇ…」


「……」


「……」



これも、間違いなく私の実力不足だ。




なんだろう。


他の人たちの会話に耳を傾けてみると私とカイくんと内容は大して変わらない。


変わらないのに、



「休みの日とか何やってるの?」


「…何も」


「趣味とかないの?」


「趣味…何でしょう……料理とかですかね…」


「へぇ。じゃあ得意料理は?」












何なんだろう、この圧倒的面接感は。



この人は面接官なのか?



これは何か試験的なものなのかな?なんて意味不明な勘ぐりを働かせた私は、



「…肉じゃがです」



なぜかド定番な答えを口にしていた。


言うほど得意でもないし。



「へぇ。すごいね」


その取ってつけたような“すごいね”に対する返答も何が正解なのか、私にはよく分からない。







…消えたい。






…あ、いや、今はトイレに行きたい。

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