第57話
八人で話すよりも三人で話す方が私にとっては何倍も気が楽だった。
果たしてこれが“三人で話す”と言えるのかどうかは際どいところだけれど、もうそんなことは私にとってはどうでもいい。
とにかく早く終わって欲しい。
お店に入ってから一時間半ほどが経った頃、この部屋の空気が変わった。
それを変えたのはやっぱり“ケンちゃん”だった。
「そろそろ席替えでもする?」
その一言で、みんなは特別大きな反応は示さなかったものの席替えをする空気になった。
でも、こんな席替えは初めてだ。
学校みたいにクジがあるわけでもなんでもない合コンの席替えとやらは、女性陣が適当な間隔を開けて座って男性陣が移動するという何ともふんわりとしたものだった。
そうか。
これで男女のペアで話をするってわけね。
テーブルの端に座る私の隣…つまりは誰も座ろうとしなかった余り席に座ったのは、カイくんという人だった。
出遅れたのかな?
なんか申し訳ない…
チラッと私とは反対方向の席を見るとユマちゃんの隣には“ケンちゃん”がいて、二人は相変わらず楽しそうに盛り上がっていた。
“ケンちゃん”、ユマちゃんの隣座れたんだ。
良かった…
「ごめん、名前なんだっけ?」
…あぁ、だめだめ、私はそんな人の心配をしている場合ではなかった。
カイくんは一応私とも話してみようと思ってくれたようで、こちらに体を向けて座っていた。
「…ナナミです」
名前を覚えられていなかったことなんて正直どうでもいい。
そうだろうとも思ったし。
それでもカイくんがあまりにも当たり前のような言い方で聞くもんだから、私も忘れてやれば良かったと少し後悔した。
「たしかユマちゃんと同じカフェで働いてるんだよね」
この人は根は悪い人ではないんだと思う。
別に興味ないけど感は顔からダダ漏れだけど、一応私と話そうとはしてくれているし。
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