第52話

「合コンいつ?」


「…え?合コン?」


「前に言ってたでしょ?ユマちゃんと行くとか何とかって」


「…あぁ…あれは明日だそうです」



私がすぐに答えると、安藤さんは「明日…」と小さな声で呟いた。



「…俺ね、明日福岡行ったらもう木曜まで帰ってこないんだ」


「あぁ…そう…ですか…」


私は安藤さんが何が言いたいのかがいまいち分からなかった。



「まぁつまり何が言いたいかっていうと……気をつけてね?」


「え?」


「ユマちゃんが一緒なら問題ないとは思うんだけど、念のため」


安藤さんはそう言うと、もう一度「気をつけて」と同じ言葉を繰り返した。




それを言うためにわざわざ店に顔を出してくれたんだ。


本当にどこまでも良い人だ。









私は何でこの人を好きにならなかったんだろう。









「…ありがとうございます。肝に銘じておきます」


私が笑顔でそう言うと、安藤さんはまだちょっと困ったような顔をしていたけれど「うん」と返事をして店を出て行った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る