第51話
「俺、明日からまた出張なんだ」
「あ、そうなんですね…次はどこに行かれるんですか?」
「今回は福岡」
「福岡…土日なのに大変ですね」
私がいつものように無難な言葉を返すのと同時に、ピーッ、ピーッ、と大きな音が聞こえて私はまたすぐにコーヒーマシンへ顔を向けた。
「うん…あのさ、」
何か言いたげな顔をしている安藤さんを少し気にしつつも、私は出来上がったアイスコーヒーに蓋をした。
「このまま持って行かれます?それとも紙袋に入れましょうか?」
「あ、いや、このままで大丈夫だよ。ありがとう」
「わかりました」
私はすぐにストローをさすと、カウンターの安藤さんの目の前にスッとそれを置いた。
「じゃあこれ」
安藤さんは私に千円札を差し出した。
「はい。………お釣りの四百円です」
「ありがとう」
安藤さんはコーヒー片手にお釣りの四百円を受け取ると、すぐにそれをポケットにしまった。
「……」
「……」
コーヒーは買えたはずなのに安藤さんはなかなか立ち去ろうとしない。
どう…したんだろう…
パッと後ろを振り返ってみると、私がさっきしていたサンドイッチの作業をユマちゃんが代わりにやってくれていた。
やらせちゃってる…!
私はすぐに正面へ向き直ると、慌てて口を開いた。
「っ、あの安藤さん、私仕事に戻っ」
「ナナミちゃん」
「え?…あ、はい…」
安藤さんのいつになく真剣な顔つきに、私は思わずドキッとした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます