第50話
まだ時刻は九時半だ。
こんな朝早くなんて珍しい…
私はユマちゃんに促されるままに手袋を外してカウンター越しに立つ安藤さんに近寄った。
「どうしたんですか?」
「ごめんね、準備中に」
十時に開店するこの店の店内はまだ静かで、いつもよりも安藤さんの声がしっかりと聞こえた。
「大丈夫ですよ。…あ、コーヒーですか?」
「えっ、作れるの!?」
安藤さんはとても嬉しそうだった。
「もうレジは開けてるしコーヒーマシンも電源入ってますから。本当はダメですけど、安藤さんは常連さんなので」
「ありがとう!俺今から外出るから、めっちゃ嬉しいわ!」
「じゃあいつものアイスコーヒー用意しますね」
私はすぐに専用のカップに氷を入れて、キッチン内にあるコーヒーマシンにそのカップをセットした。
———…ピッ…
特に話すこともない私は、ものの十五秒くらいで一定の量が出てくるコーヒーを黙ってぼんやりと眺めていた。
「…ナナミちゃん、」
安藤さんの私を呼ぶその声は、なんだか改まっていて神妙な声色だった。
「はい?」
私はすぐにコーヒーマシンからカウンターを隔てた向こうに立つ安藤さんに目をやった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます