第49話
「ちなみに四対四だから。穴あけんな?」
「…うん、わかった」
さっきまでの焦りはどこへ行ったのか、私はもう諦めに近いような気持ちで明日の合コンを覚悟した。
どうせ何もない。
良い意味でも悪い意味でも、何もない。
その時間が過ぎてしまえばきっとみんな私の存在なんて死ぬまで二度と思い出しはしない。
そう思えばもう行っても行かなくてもどっちでも良く思えた。
透明人間になるのは簡単だ。
意図せずとも私はそうなってしまうんだから。
それでユマちゃんの気が済むならそれでも別に良い。
「でも女は意識しなよ!?」
「女…?」
「コンタクト持ってる?」
私はブンブンと首を振った。
「そっか。それならまぁしょうがないか…あ、でも絶対スカートで来てね!」
ユマちゃんがそう言ったのと同時に、カウンターの方からコンコンッと音がして私達はパッとそちらに顔を向けた。
その音の出所はカウンターを指の関節で叩いた音だったようで、安藤さんがキッチン内を覗くようにこちらを見ていた。
「おはよう!」
「おはようございまーす」
「おはようございます」
私達はすぐに挨拶を返して、私はそれと同時に軽く頭を下げた。
「…行ってあげなよ」
ユマちゃんは隣の私にしか聞こえない声でそう言うと、右肘でトントンと私を突いた。
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