第42話

「そんな奴やめなよ。出会ったところでヒモになるのがオチでしょ」


「いや、そんなことはっ」


「事情は知らないけどさ、二十四の男がホームレスなんておかしいじゃん。家なんかなくたってできる仕事はいくらでもあるんだよ?それなのに何もやってないんでしょ?絶対安藤さんの方がいいじゃん」



「いや…まだ何もやってないかどうかは分かんないよ…」



私の苦し紛れの言い分は何の力も持っていなかった。



「ナナミさぁ…それで安藤さん渋るとか、マジであんた何様だよー」



安藤さん…




…違う。


そうじゃない。


渋るとかじゃなくてさ、そこに私の気持ちがなかったらどうにもならないじゃん…





「ねぇ、ナナミ、」



何も言えなくなった私に、ユマちゃんはもう一度改めて私の方に体を向けた。



「付き合うイコール結婚じゃないんだよ?付き合ってみて合わないなって思えば別れる。みんなそれを繰り返しながら自分に合う人を見つけ出してるんだから。仮に安藤さんと付き合ったとしても違うなって思えば別れてもいいんだよ?」




安藤…さん…




「うん、分かる…ユマちゃんの言ってることはちゃんと分かってるよ?でもさぁ…それってどうなんだろう」


「え?」


「私ってその二択なのかな?その片思いの人が無理だから、それなら好きでもない安藤さんと付き合おうってそれもちょっと違うんじゃないかな…」


それってまるで、自分を好きでいてくれるなら誰でもいいみたいだ。



「そりゃもちろん付き合えば好きになることだってあると思うけど、もしそうならなかった場合、少なくとも安藤さんは傷付くよね?」





何を偉そうに…


誰かと付き合ったことなんてないくせに。



「……」


「……」



それに安藤さんにだってはっきりと“付き合おう”とか“好きだ”とか言われたわけじゃないじゃん。





ユマちゃんに謝ろうと思い、私は慌てて口を開いた。



でも、



「ユ」


「たしかにそうだね」



ユマちゃんは意外にも落ち着いて私の言葉に賛同した。

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