第39話
チッと小さな舌打ちが聞こえたかと思うと、ユマちゃんは「なんだよアイツ、ヘタレかよ」とボソリと言ってまた背もたれに背中を預けるように座った。
「えっ!?」
「気になるって何?遠回しなんだよ。“好き!付き合って!”って言えば終わる話じゃん!!ねぇ!?」
「いや…」
“ねぇ!?”と言われても…分かんない…
「ナナミは見るからに奥手なんだからさぁ、あっちがそれくらい攻めてくんないとダメじゃんかぁ。…ねぇ?」
「……」
もう一度違う角度から賛同を求められた私は、もう何も言えなくなった。
「…えっ?何?違う?」
ユマちゃんは少し驚いた顔でまた体を起こしてこちらに前のめりになった。
「…うん、違う」
そうじゃない。
ユマちゃんの言っていることは、そもそも根本的なところが違う。
だって私は安藤さんをそういう意味で好きではない。
「……私、好きな人いる」
「えっ、マジっ!!??」
ユマちゃんのその声はさっきとは比べものにならないくらいに大きかった。
「ちょっ、ユマちゃん声大き」
「なに!?だれ?!この会社の人!?」
なぜかユマちゃんの目はキラキラしていた。
こういう話を誰かとするのって初めてだなぁ。
これがいわゆる恋バナというやつですか。
「いや、違う…」
恋バナに慣れていない私はもう顔から火が出そうなくらいに恥ずかしかった。
「違うんだぁ…!!何やってる人!?」
何やってる人…?
うーん…
何やってるんだろう…
「…知らない」
ボソリとそう答えた私にユマちゃんは一瞬固まったけれど、またすぐにニコニコしながら口を開いた。
「じゃあ歳は!?」
「あっ、それは分かる。私達と同じ二十四歳」
今私が持っているニシヤマくんの揺るぎない情報って、きっと名前と歳だけだ。
そしてそれは九年前から何も変わっていない。
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