第28話

駅に入って傘をたたむと、さっきまであまり見えなかった安藤さんの顔がはっきりと確認できた。



「…ごめんなさい、安藤さん」


「えっ!?」


私の突然の謝罪に、安藤さんはとても驚いた顔をしていた。



「私ってこの通り地味だし会話も下手くそなんで、楽しくなかったですよね」


そう言いながらも私は笑顔だった。


「いやいや、そんなことないよ!?」


「話広げるの苦手で…でも安藤さんが気遣ってくれたおかげで、私はとても楽しかったです。ありがとうございました」


私は勝手に話を自己完結させると、安藤さんに軽く頭を下げた。


「俺も楽しかった!!ありがとう!!」


「なら良かったです」


私が笑顔でそう言うと、安藤さんは逆にスッと笑顔を引っ込めた。



「それに俺、地味な子好きだから…」


「え?」


「っ、あっ、いや違う!!地味っつうのは悪い意味じゃなくて、えっ!?てか俺何言ってんだよ、マジで意味分かんないし!!」


一人で焦り始めた安藤さんに、私は思わずフッと笑いを溢した。


そんな私に初めは気付かなかった安藤さんだったけれど、しばらくするとずっとクスクス笑う私に安藤さんはようやく気がついて「え?」と間抜けな声を出した。



「いや、ごめんなさい。焦ってる安藤さんがすごく面白くて」


「そりゃ焦るよ。なんか俺、すごい失礼なこと言っちゃったし、」


「あははっ、大丈夫ですよ。私ちゃんと自覚してますから。今更地味なんて言葉に傷付いたりなんてしませんよ」


私は本当に平気だし軽い口調でそう言ったのに、安藤さんはやっぱり少し困ったような顔をしていた。

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