第26話

「…え?」


「俺が言ってる特別な意味はないってのは、ナナミちゃんに買ってきたことに対してじゃないから!!今の子に対してだから!!」


「……」


私には言っている意味がよく分からなくて、少し焦る安藤さんをただただ見つめ続けた。


「たしかにあの子にも俺はナナミちゃんにあげたものと同じものを買ってきたよ?でもね、あっちに深い意味はないんだよ!!でもナナミちゃんに渡したのには、深い意味がある!!」


「……」


「いやっ、まぁ同じものなんだからって思われるかもしれないし後付けに聞こえたりするかもしれないけど、…でも俺は本当に違うから…!!」



バチバチと雨が傘にぶつかる音がやけに耳に響いて、



「あぁ……はい……」



私はそんなちっぽけな言葉しか返せなかった。



「……」


「……」



かなり遠回しではあるけれど、今すごく嬉しいことを言ってくれた気がする…


なのにやっぱり私はうまく言葉を返せなかった。




「…帰ろっか…」


少し落ち着きを取り戻したような優しい声が聞こえたかと思うと、安藤さんはゆっくりとまた歩き始めた。


それにつられるように、私もまたすぐに隣に並んで歩き始めた。



「……」


「……」


沈黙だけど、嫌な沈黙ではなかった。


傘のせいで顔は確認できなかったけれど、その雰囲気は安藤さんの方からも伝わってきていた。


きっと今の安藤さんも嫌な沈黙だとは思っていないだろう。



考えてみれば安藤さんは絶対に私みたいに何の経験もないような人じゃないのに、どうしてそこまで私を気にかけてくれるんだろう。


からかってるとか?


罰ゲーム?


…いやいや、この歳になってそんな罰ゲームなんて受けないか…




あれ?


ていうか安藤さんって何歳だっけ…

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