第25話
「ごめんね、ナナミちゃんと話してたのに」
お互い傘をさしているせいか私達の間には絶妙な距離が開いていて、その上強めの雨が降っているせいで安藤さんの声は少しだけ聞き取りづらかった。
「いえ、私は全然…」
本当にそこは気にしていなかった。
安藤さんは間違いなく人気者だもん。
おまけにすごく良い人だから。
あんなのしょうがないことだよ。
それに私が気持ち的に沈んでしまった原因はそこじゃないし。
ていうかさっきの私達は“話してた”内には入らないんじゃないかな?
「…あのさ、さっきのことなんだけど…」
「…え?」
安藤さんが何の話をしているのかがイマイチ分からなかった私は、安藤さんの顔が見えるように少しだけ傘を右側に傾けた。
「あの、今の子が言ってた…あぶらとり紙のこと」
安藤さんはすごく申し訳なさそうな顔をしていた。
「それがどうかしました?」
「…俺さぁ!!」
安藤さんはさっきよりも少し大きな声でそう言うと、歩いていた足を止めてこちらに体を向けた。
だから私も、思わず足を止めて体ごと安藤さんの方を向いた。
「あのあぶらとり紙に特別な意味はないから!!」
「………あぁ、」
この人は本当に親切で良い人だ。
わざわざ言いにくいだろうに、そこまではっきりと言ってくれるなんて逆にこっちが申し訳ないなぁ。
大丈夫。
勘違いなんてしない。
「大丈夫ですよ。ちゃんと分かってます。私何も思ってませんから」
「なら良いんだけど…」
「でも今度からは私には買ってこなくていいですよ?いつも貰ってばっかりで申し訳ないですし。それなら私の分も違う社員の方に、」
「いや違うよ、そうじゃない!!!」
安藤さんは珍しく大きな声で私の言葉を遮った。
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