第17話
「あとこれも」
そう言いながら安藤さんはポケットから小さな紙袋を取り出した。
「…え?」
私が少し戸惑いながら右手を出すと、安藤さんは私の手にそっとその小さな紙袋を乗せた。
「これは…」
軽くて小さい…
茶色い紙袋に入っているせいで、中身は全く見えなかった。
「これはナナミちゃんに」
「……」
みんなのとは別にお土産を買ってくるなんて…
“安藤さんはナナミ狙いじゃん”
勘違い……え……?
そう思ってしまえば、私は安藤さんが好きでもないのに一気に顔が赤くなるのが自分でも分かった。
免疫なさすぎて恥ずかしい…
「こここれって何ですかっ?」
私の焦ったようなその言い方に、安藤さんはいつも通り優しく笑ってこちらを見ていた。
「これはあぶらとり紙」
「……えぇっ!?」
私は驚いて、思わず大きな声を出しながら顔を上げた。
「えっ!?何!?あぶらとり紙嫌だった!?」
「いや、嫌っていうか…」
「ここ有名だって聞いたんだけど!」
「…あぁ、そうなんですか?すみません、私そういうの疎くて…」
なんだ、ビックリした…
てっきり遠回しに“お前テカってるぞ”って言われたのかと…
「一緒に行った女子社員も“京都に来た女子は必ず買う”って言ってたから…あーいや、そのっ…ごめんっ…」
安藤さんはさっきの私以上に焦っていた。
でも、私はそれよりも安藤さんが今言った“女子”というワードで頭がいっぱいだった。
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