第73話

私はソウちゃんが飲んだコーヒーの少し残ったマグカップと自分の半分以上コーヒーが残ったマグカップを洗うと、明日に備えてすぐにシャワーを浴びて早々に布団に入った。


今日は朝から一日中何かと気持ちが騒がしかったからなのか、まだ高校生が眠るには早すぎる時間だったけれど私はそれからすぐに眠りについた。










———…翌朝、


隣の部屋の彼のことを思いながら眠ったからなのか、私はまだ外も真っ暗な時間に目を覚ました。



また寝坊するという失態は回避できたということは時計を見なくてもすぐに分かったのだけれど、焦る気持ちがそうさせたのか私はすぐに起き上がって枕元に置いてあった携帯に手を伸ばした。



「五時…」



でも私はそれを“まだ早い”とは思わなかった。


だって彼が何時に家を出ているのかを私は知らないから。



昨日寝る前に導き出した答えは、やっぱり“また話しかける”というなんとも単純明快な方法だけだった。



昨日のあれは、きっとあそこまで彼が何も言わないというのがあまりにも想定外で、私までもが何を言えばいいのか分からなくなったのがいけなかったのだと思う。


だからそれでできてしまった時間の隙間で、彼は自分の部屋に入ってしまったのだろう。



一方的だったとはいえ、私があのまま話しかけ続けていたらいつかは彼も何かしらの言葉を返してくれていたのかもしれない。



一応動きを止めてこちらを見てくれたのだから、その可能性はゼロじゃないはずだ。



昨日の彼のあの態度を踏まえた上で私は昨日ソウちゃんが帰ってから眠るまでの間に何度もシュミレーションをしてリベンジの流れは掴んだつもりだった私は、もう想定外なことで困って何も言えなくなるということはないだろうと変な自信までついていた。




私は部屋の電気をつけると、すぐに顔を洗って学校へ行く準備をした。



とは言っても、私のする準備なんて“準備”と言えるほどのものでもない。



顔を洗って歯を磨いて、制服に着替えてある程度身なりを整えたらもうそれでいつでも出られる。


欲を言えば顔を洗う前に朝食を食べたいところではあるけれど、いつ隣の彼が出勤するかなんて分からないのだから今日ばっかりはそんな悠長なことをしている場合ではなかった。




今日で、また彼のことを一つ知れる。



それが出勤のために家を出る時間だなんて人が聞けばバカだと笑われてしまいそうだけれど、今の私にはそんな情報すらも貴重で嬉しかった。

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