第72話
「そもそもソウちゃんの通う大学はレベルが高いもん」
「だから今のうちから勉強して間に合わせろって」
「いやぁ…今からじゃ間に合わないと思うけど」
「そんなことねぇよ。まだ間に合う。だから男になんか気ぃ取られてる場合じゃねぇぞ」
ソウちゃんはまるで大学受験をするのが決定事項かのようにそう言ったけれど、私の考えはもちろん揺るぎはしなかった。
する、しない以前に、
…できないんだよ、ソウちゃん。
「あぁ、なるほど!結局言いたかったのはそれかぁ!」
「違うわ!コトは頭が悪いんだからもっと勉強しろって言ってんだよ!」
「ははっ、まぁそれは否定できないかな」
「はぁ……分かんねぇとこは俺が教えてやるから」
「ありがとう」
決して“する”とは言わなかった私だったけれど、ソウちゃんは一応納得したようで「じゃあまたな」と言って今度こそしっかり私の部屋を出て行った。
大学受験は絶対にしない。
そもそも私の通う高校は進学校でもないし、ソウちゃんも言っていたようにやっぱり叔父さんのことがどうしても一番引っかかる。
どれだけ酷い言葉を浴びせられる覚悟をしていたって、その時がくれば私はきっとその覚悟以上に傷付いてしまうことがちゃんと分かっているから。
それに私の学力でソウちゃんの大学なんて…
ソウちゃんはああ見えて優秀だ。
高校だって私が今通っている名前を書けば誰でも入れるようなところなんかじゃなかったし、ソウちゃんが通っていた予備校とやらの月謝なんてきっとこの部屋の家賃の何倍もしていたと思う。
…実際に聞いたことはないから分からないけれど。
お金持ちで友達も多くて頭が良いなんて、そんな人と私のどこが住む世界が同じだと言うんだろう。
…まぁそんなことをソウちゃんに言ったら怒りそうだから、わざわざ口になんかしないけどさ。
その上私は大学に行ってまでやりたいことだって別にない。
ソウちゃんが聞けば“行ってから探せばいい”とかなんとか言いそうだけれど、そんな曖昧な未来のために叔父さんとお金のことで一悶着なんて死んでもごめんだ。
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