第66話

“嫌いだった奴”って…


私はやっぱり嫌われてるのかな…



「今のコトにとっては学校が世界の全てかもしんねぇけど、それも今だけだよ」


そう言葉を続けたソウちゃんは、いつのまにか屈めていた体をまた起こして今度は両手を背後の畳についていた。



ソウちゃんはやっぱり私よりもくつろいでいて、リラックスしているようだ。



お金持ちなのにこんな部屋にも二日で順応できるなんて、ソウちゃんって得してるな…



そんなことをぼんやりと考えていた私を気にすることなく、



「環境が変わればまた自分の世界は新しくなる」



ソウちゃんはまだ話を続けていた。



「…と、言いますと?」


「だからぁ!そんなクソつまんねぇ奴なんかいちいち相手にする必要ねぇし、お前がわざわざヘコむほどのことじゃねぇんだよってこと!」


さっきまでは私に寄り添うように優しく接してくれていたソウちゃんは、私のこの今の悩みがよほど小さなことにでも思えたのか少しだけ面倒くさそうな言い方で声を荒げた。



そんなソウちゃんに「急に投げやり…」とついつい思ったことを口にしてしまった私だったけれど、ソウちゃんはそんな私すら気にせずに「てかさぁ、」と依然大きな声で話を続けた。



「そういうのって無視してる本人は案外大して何も考えてなかったりすんだよ」


「えっ、そうなの!?」


「そうそう。その時の気分とかテンションとかでやっちまっただけとか…時間が経てば忘れてたり、次話しかけたら普通だったりするじゃん」


「……」



気分とかテンション…


まぁたしかに仕事終わりで疲れていたから隣の部屋の住人と話すような気分ではなかったのかもしれない……けど……




“時間が経てば忘れてる”?


“次話しかけたら普通”?



そうなの?


そんなもん…?



「そんなもんだって」


まるで私の考えていたことを読み取ったかのようにそう言葉を付け足したソウちゃんに、私は「うん……」とどこか煮え切らない返事をすることしかできなかった。

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