第63話
「そっか。じゃあもうこの話は終わりね」
「え?あぁ、まぁいいけど…」
「それより今日はどうしたの?」
「え?あぁ、…」
まだ少し納得していなさそうなソウちゃんは、早速話を変えようとした私に少し戸惑っているようだった。
「どうしたも何も、挨拶行くんだろ?」
「あぁ、…それでわざわざ来てくれたんだ…ごめん、それなんだけどもう大丈夫」
「え?大丈夫って?」
「今時は挨拶なんてしない人も多いみたいだし、真下と隣に行けたからもういいや」
「隣って片方だけでまだ角部屋の方には行ってねぇじゃん」
昨日私が右隣の部屋に挨拶に行ったと信じ込んでいるソウちゃんは、そう言いながらあの彼の部屋のある方の壁を指差していた。
「いいよ、別に」
「よくはねぇだろ。どんな奴か、俺がこの目でしっかり確かめてやるよ」
そう言って早々に立ち上がったソウちゃんだったけれど、私が座ったまま落ち着いたトーンで「ううん、大丈夫」と言えばまたすぐに私の隣に座り込んであぐらをかいた。
「…大丈夫って何が?」
「挨拶に行く必要なんかないよってこと」
「顔見とかなくていいのかよ?」
「いいよ。滅多に会うこともないだろうし」
「でも物騒な噂があるような奴じゃん」
「ふふっ、ソウちゃんまだそれ信じてるんだ?」
決してそんなつもりはなかったのだけれど、どこか子供扱いをするような言い方になってしまった私にソウちゃんは少し眉間にシワを寄せた。
「今日のお前なんか変っ!!!」
突然大きな声でそんなことを言ったソウちゃんに、私からは思わず「え?」と気の抜けた声が出た。
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