第42話
「明日何時から行く?」
布団の中で仰向けで寝転んでいたソウちゃんはそう言いながらこちらに体を向けるように体勢を変えて、同じく仰向けになっていた私の体に両腕を回して抱き寄せた。
その拍子にそちらに体を向けるように横向きの体勢になった私を、ソウちゃんはそのまままた今一度ぐっと自分の胸の中に抱き寄せた。
「明日?」
「一緒に挨拶に来てくれって言ってたろ」
「あっ…!」
「忘れてたのかよ」
それからソウちゃんは「ひどいのはどっちだ」と言いながら私の首筋に擦り寄った。
「ごめんっ…そのことなんだけどっ、」
「もういいよ。てかこの部屋寒すぎ」
依然私の首筋に擦り寄るソウちゃんのその声は、少しだけこもっていた上に私の肌に直接熱を持って伝わってきた。
私はそんなソウちゃんの頭を抱きかかえるように、両腕をソウちゃんの首に回した。
「あははっ、うん、めちゃくちゃ寒いね。さすがの私でも布団をこんなにもありがたいと思ったのは生まれて初めてかもしれないよ」
笑いながらも自虐的にそう言った私に、ソウちゃんはそれを半ば無視するように「床暖にしろよ」と言った。
「それは無理でしょ」
「できんだろ。俺が業者呼んでやるよ」
「あははっ、無理無理!!」
ソウちゃんなら本当に業者を呼びかねないな。
きっと今言っているそれだってソウちゃんにとっては“普通”のことなのだろう。
「俺ん家の和室だって床暖だぞ」
「私は畳だからできないって言ってるんじゃないよ?」
「え?」
「賃貸でそこまで手を加えるのはダメでしょってこと」
「そうなのか?」
「ダメだよ。出る時元に戻さなきゃいけなくなるし」
「なら戻せばいいじゃん、普通に」
…出た…ソウちゃんの“普通に”。
「…無理なものは無理なの」
私はまるで子どもに言い聞かせるかのように優しくそう言うと、ソウちゃんの首に回していた両腕に少し力を入れて私もソウちゃんに擦り寄った。
私がそうしたからなのか、ソウちゃんはそれ以上はもう何も言わずに私の体をより一層強く抱き寄せた。
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