第15話
ソウちゃんは私の入れたコーヒーを飲み終えると、そのマグカップをシンクに持ってきつつ私に「買い物行くか」と言った。
その提案にすぐに「うん!」と言った私をソウちゃんが連れて行ったのは、最寄駅から二駅隣のところにある大きなショッピングモールだった。
「まずは腹ごしらえだな」
そう言われて携帯を見れば、時刻は十四時を過ぎたところだった。
ここに来るのはもちろん初めてではなかったけれどソウちゃんと来るのは何気に初めてで、それ以外なら私は学校の友達と数回来たことがある程度だった。
だからフードコートの場所もいまいち分からなかった私に、ソウちゃんは迷うことなく「こっち」と私を誘導してくれた。
私はてっきりフードコートに行くのだと思っていたけれど、ソウちゃんに連れられるままに到着したその場所はショッピングモール内にある独立した飲食店の通りだった。
「串カツと、洋食のバイキングと、蕎麦屋と、お好み焼きと…あとこのめっちゃ種類が多いオムライスの専門店!コト、お前どれがいい?」
その言い方とテンションの上がりようからソウちゃんは今オムライスが食べたいのだとすぐに分かった私は、迷わず「オムライスかな」と言った。
「マジか!俺もそう思ってた!」
ソウちゃんは嬉しそうにそう言って私の手を引くとすぐにそのままそのお店に入った。
お昼時を過ぎていたからなのか店内はかなり空いていて、私達はゆっくり静かに昼食を済ませることができた。
ご飯代を当たり前のように支払ってくれたソウちゃんに「ありがとう」と言うと、ソウちゃんはこちらを見ずに「ん、」と言った。
ショッピングモールに着いた当初は「ここなら全て揃う」と言ってくれたソウちゃんだったけれど、電車で来た私達に買って帰れるものは限られていて結局大きな物で買えたのは布団一式だけだった。
それもソウちゃんは担ぐように持っていたけれどとても大変そうで、細々した物を持つ私はとても申し訳なくなった。
「ねぇ、私がそっち持とうか?」
「俺に持てねぇもんをお前に持てるわけねぇだろ。てか別に重くねぇわ、これくらい」
「でも…その布団とかのお金も全部出してくれたのに申し訳ないよ!」
「いいって、お前必要最低限の金しかもらってないって言ってたじゃねぇかよ」
「そうだけどっ…ご飯だって出してもらってるのにごめんねっ!?」
その後私が何度も謝りながら「やっぱり二人で持とうか!」と提案してみても、ソウちゃんは布団を私に持たせてはくれなかった。
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