初体験と言えば初体験で、未遂と言えば未遂で。結論から言うと、セックスはしていない。四季くんはわたしの体を隅々まで見て、触れて、感じさせてくれた。



四季くんに触れられる事に怖いと感じる訳がなく、嫌だと思う事もされてない。ただ、恥ずかしさは常にあって、そんなとこを…?そこも…?と、一人で終始混乱はしていた。



それでも、その度に、四季くんは優しくて。わたしの初めてを大事にしてくれた彼は、まずはこうして触られる事に慣れて行こうと言った。



私自身、気持ち良いと思えるより、痛くない方が有難い。四季くんは、そんなわたしの心情を察してくれているのかなと思える場面がいくつかあった。


だから慎重に、丁寧にわたしに触れてくれていたと思う。



「四季くん…」


「何?」


「本番はいつするの?」


「本番…?」


「本番」


「…何の試合?」



彼は本当に優しく笑う人だ。



「試合じゃない…」


そう言いながらも、わたしにとっては試合に挑むような感覚に近いのかもしれない。



「ねぇ四季くん」


「何?」


「四季くんはそれで良いの?」


「何が?」


「わたしに触れてばかりで、四季くんは大丈夫なの?」



ベッドに横たわり、背後から抱き締められた状態で、四季くんの息遣いが酷く安心する。



「大丈夫」


「四季くんに大丈夫って言われると落ち込む」


「えっ?」


「大丈夫なんだ…って」


「え?」


四季くんの戸惑ったような声は、わたしの胸を擽る。



「君の体がもう少し慣れたら俺を受け入れて欲しい」


「受け入れてるよ?」


「んー…」



その曖昧な頷きに、体を反転させ、四季くんへ顔を向けると、お腹に回っていた手が腰へと回され、抱き締め直してくれる。



「四季くん」


「何?」


「ベルトが痛い…」



腰を引き寄せられると、剥き出しの肌に当たって擦れる。



「ごめん。彩ちゃん服着よう」


「四季くん」


「なに?」



聞き返す彼の頬に手を添え、自ら口付けをした。わたしの手に四季くんが手を重ねてくる。舌を出したらすぐに絡め取られた。



心地良い息苦しさに、唇をゆっくり離すと、名残惜しそうに四季くんがわたしの手を離さない。



「四季くん」


「彩ちゃん…」


「四季くんの好きなキスの仕方」


「……」


「覚えました」


「君って子は本当に…」


「ん?」


「…学習能力が高いって事はよく分かった…」


「もっと覚えられるよ」


「え…?」


「四季くんの好きなこと、もっと教えてね?」


「…君には敵わない」



四季くんはわたしを強く抱き締めて、胸に顔を埋めた。髪が肌に触れ、彼の頭を抱えるように抱き締め直した。



時々、四季くんは少年のような振る舞いをする。笑う時だったり、悪戯な口調だったり。わたしに素を見せてくれる瞬間が堪らなく好き。



だから今もこうして、彼を抱き締めていると、好きが溢れて止まらない。



彼はまるで——…


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