寒蝉
1
蝉の鳴き声が聞こえると、どこからともなく切なくなった…
夏の夜空を見上げると、懐かしい情景が脳裏に浮かぶ。
もうすぐ盆がやってくる。
今年の墓参りは、彼女を連れて行きたいと思った。
じいちゃんとばあちゃんにも会わせていないし、何より親父の事を話していない。
拓に墓参りに連れて行こうと思うと話したら、「高校生におまえの人生を背負わすのは荷が重くねぇか?」と心配された。
真剣に失礼な事を言う奴だなと、つくづく感心する。
勿論、強制的に連れて行くつもりはない。彼女にも先祖の供養はあるだろうし、他人の墓参りに苦言を呈せば、それはそれで仕方がない。
「じいちゃんとばあちゃんに紹介してどうするんだ?」と拓に聞かれた。「そんな事をしたら、結婚相手を紹介するみたいで、高校生には荷が重くねぇか?」と心配された。
「じゃあいつなら良いんだ?」と聞き返したら、「その前に彼女にその気持ちを伝えているのか」と更に聞き返された。
伝えた覚えはない。だからそう答えた。
拓は呆れ返った様子で、「じいちゃんち行く前に、彼女に気持ちを伝えろ」と、釘を刺す様に念を押された。
気持ちとは、俺の気持ちとは…彼女にとって優先してもらう様なものだろうか…
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