「彩ちゃんは、言葉と態度が逆だよね」



彼の言葉に視線を上げた。


彼はわたしを見ていなかった。



「まだここ見る?」


辺りを見渡して、やっとわたしに視線を向けた。



「アザラシ見に行く?」


彼が見下ろしてくる。



「四季くん…」


「何?」


「お腹すいた…」


「え?」


「四季くんはお腹空いてない?」


「いや、アザラシ見ない?」


「見る…」


「じゃあアザラシ見てからご飯食べる?」


「うん…」



じゃあ行こう…と彼が動き出す。



「彩ちゃん」


「ん?」


「魚が睨んでたよ」


「え?」


「彩ちゃんがお腹空いたなんて言うから」



彼は大人で、いつも余裕綽々としているけど、時々笑って見せる表情は、まるで少年のよう…



「四季くん、楽しい?」



その顔を見ていたら、聞かずには居られなかった。

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