余裕綽々よゆうしゃくしゃくと、悠々ゆうゆうとして見える大人な彼に、わたしは追い付きたい。



「四季くん、四季くん!」



彼の腕を叩くと、「何?」と耳を傾けてくれる。



「四季くんあれ見て!」


お世辞にも可愛いとは言えない魚がわたしを睨んでいる。



「わたしはこの子に怒られているの?」


「え?その魚は彩ちゃんを見てるの?」


「え?」


「俺もさっきから視線を感じるんだけど…」


「え?」



魚へ視線を戻すと、確かに魚はわたしを睨んでいる。



「四季くんに怒っているの?」



魚へ問いかけると、彼が横から「え?」と声を漏らす。



「俺は君に怒られるような事をしたか?」


四季くんが魚へ問いかける。



そんな事を聞いて貰えるこの魚が羨ましい。


わたしも彼からそんな風に質問されてみたいものだ…



「怒ってるよ」


「え?」


彼はわたしに視線を向ける。



「怒ってるよ。四季くんを睨みつけてる」


「え?」


「魚が…」


「あぁ」



わたしもこの魚と同じ様に睨みつけれたら気づいてくれるのだろうか…



「彩ちゃんまでどうしてそんな顔をしてるの…」


彼の手がわたしの頬を摘んだ。



「元々こうゆう顔だよ」


彼の手を握り返した。



「え?まさか。もっと可愛いだろ」


彼は頬から手を離し、わたしの頭を撫でる。



恥ずかしくて視線を逸らした先、魚がわたしを睨みつけていた。

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