5
「彩ちゃん着いたよ」
駐車場に入り、車から降りる。口の中に残っている飴が、言葉を発するのを少なくさせた。
四季くんの自宅マンションは真新しそうな建物だった。4階に住んでいると、エレベーターに乗った時に教えてくれた。
部屋の前まで行くと、ドアの郵便受けに書類が差し込まれている。
鍵を開けて書類を引っこ抜くと、四季くんがドアを開けてくれた。
先に中へ入るよう誘導され、後ろ背にドアが閉まる。
薄暗い玄関に立ち尽くしていると、「入って」と声をかけられた。
「お邪魔します」
四季くんの後を付いて進むと、リビングへ通された。
「座って」
ソファに誘導されて腰を降ろす。
「彩ちゃん、何か飲む?」と聞かれたけど、口の中に飴が残っているから大丈夫だと伝えた。
四季くんは「ちょっと待っててね」と言って、手に持っていた書類を持ってリビングを出て行く。
静まり返ったリビングは、やけに広いなと感じた。誰かと一緒に暮らしているのか…その割には物が少ない気もする。
立ち上がってカーテンを少し開けた。誰とも交わらない視界が広がり、四季くんがこの部屋を選んだ理由は知らないけど、わたしはこの部屋が好きだなと思った。
今日は休みだったのかな…
用もないのにお邪魔するのも気が引けてくる。
リビングに戻って来ない四季くんを探して、玄関の方を覗いてみたけど居なかった。
口の中の飴が溶けて消えて無くなり、二つ目を缶の容器から取り出して口の中へ入れた。舌で転がしながら落ち着かない。
もう一度リビングのドアの前に立ち、四季くんの姿を探してみる。左に見える通路から少し開いている部屋のドアが見えた。
引き寄せられるようにドアの前まで行き、軽くドアをノックすると、四季くんの声がした。誰かと話をしているみたいで、部屋の中は覗かず、ドアが開くのを待つ。
すぐに四季くんが部屋へ招き入れてくれた。電話をしながら部屋のドアを開けてくれる。
窓から差す明かりが部屋の中心にあるベッドを際立たせる。隅に置かれた机に書類が並べられ、それを見ながら電話で話をしているようだった。
「明日の流れは以上だから、あとは現場で確認して」
四季くんはそう言って電話を切った。
「ごめんね彩ちゃん」
四季くんが振り返り、声をかけてくれる。
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