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どれぐらいの時間で到着するのか、どっちの方角から来るのか、不確かな事ばかりで落ち着かない…
四季くんに会える喜びと、少しの気恥ずかしい気持ちを抱え、立ち上がって足元を見つめていた。
「今日は暖かいね」
聞き慣れた声がして顔を上げる。
「彩ちゃん」
四季くんの話し方が懐かしい…
「四季くん…」
振り返ると、四季くんが笑ってくれた。
「四季くんだ…」
目の前まで来た四季くんに、思わず手を差し伸べたら迷わずその手を引き寄せてくれた。
抱き締めてくれる彼の腕の中から顔を上げる。
「四季くん髪切った?」
彼の頭に手を伸ばすと、触りやすい様に頭を下げてくれた。
「切ったよ。彩ちゃんは変わらないね」
頭を上げると、今度はわたしの髪に触れる。
「行こう、車を停めてある」
腰に回っていた手が離れた時、もう少し触れていたかったと思った。
図書館の敷地内にある小さな駐車場に彼の車を見つけた。
「乗って」
助手席のドアを開けてくれる。
「お邪魔します…」
「閉めるから足下気をつけてね」
四季くんが助手席のドアを閉めてくれた。運転席に乗り込むと、エンジンをかける。
「四季くんもう半袖になってる」
寒くないの?と彼の左腕を摩ると、細いと思っていた腕が筋肉質な事に気付いた。
「四季くん…腕硬いね」
「あぁ、仕事柄ね。勝手にこうなった」
「細いのにね…」
その見た目からは筋肉質な体型には見えない。
「入院中に痩せたから」
「入院中に…」
「彩ちゃん、行きたい所ある?」
四季くんに聞かれて、首を横に振った。行きたい所なんて無い。ただ四季くんに会いたかっただけ…
「じゃあ俺の家寄っていい?」
「四季くんの家?」
「うん。会社の書類が届くんだけど、それだけ確認していい?」
そんな…
「四季くん、わたし帰るよ」
「彩ちゃん」
「忙しいのにごめんなさい」
「彩ちゃん、大丈夫」
「でも…」
「大丈夫」
四季くんは優しいから…四季くんの本心は分かり難い。
「シートベルトするよ」
彼はわたしの前へ体を寄せ、シートベルトを装着してくれた。
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