亜美に励まされて、わたしは四季くんに連絡をしようと決意した。最後に会ったのは四季くんが退院した日…それも用事の前に偶然バス停で会えたとゆうだけ。



すぐに四季くんは言った。


「また連絡するね」と…



四季くんはあたしの事を知っているかもしれないけど、あたしは四季くんに関して知らない事が多すぎる。



不安定な情報だけで何を頼りに道しるべを辿れば良いのか迷っていた。



図書館を出て亜美を見送り、バス停には行かずに近くの石段に腰掛けた。



「はぁ…」


意を決して通話ボタンに手を伸ばす。



今日は日曜日…四季くんも休みかな…



通話音が無情にも鳴り続ける。



ディスプレイに表示された「上村 四季」とゆう名前を手の中で見つめていた。



「はい」



暫くして、画面が通話開始の表示に切り替わり、電話口から声が聞こえたので慌てて耳元に当てる。



「もしもし?」



四季くんだ…



「彩ちゃん?」



四季くんの声がする…



「…四季くん」


絞り出した声が泣いているみたいだった。



「彩ちゃん大丈夫?」


「四季くん…元気にしてた?」


「うん、元気だよ。彩ちゃんは元気にしてた?」


「うん」



四季くんの柔らかい話し方が凄く安心する。



「彩ちゃん今何してる?」



四季くん…会いたい。



心では簡単に呟けるのに、言葉にするのがこんなにも苦しい。



「彩ちゃん大丈夫?」


「四季くん…」


「何?彩ちゃん」


「四季くん…」


「うん」


「四季くんに会いたい…」


その言葉が口から音となり発せられた瞬間、呼吸が乱れるのを感じた。



「彩ちゃん今どこ?」


「四季くんに…ずっと会いたかった」


「うん。わかった」



変わらない口調で肯定し続けてくれる彼の声を耳で受け止めながら、拳をギュッと握り締めた。



「彩ちゃんどこに居る?」


「…図書館の外」


「わかった。すぐ行く」


「…え?」


「そこで待てれる?」


「待てれる…」


「じゃあ、」


「四季くん来てくれるの…?」


「行くよ。そこで待ってるんだよ」


「うん」



四季くんは「じゃあね」と電話を切った。



会いたいと言ったら、こんなにも簡単に実現されてしまうなんて…会いたくて四季くんを何度も思い浮かべて、そしてまた会いたいと嘆く日々だったのに。

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